天皇の国史 天皇という存在を通して日本を知る 読書メモ

    今年の 10 冊目。竹田 恒泰 著「天皇の国史」読了。

    歴史というのはあたりまえだが過去のできごとを学ぶということになる。だから過去の遺物のような学問といった意識がぼくの中にあったんだが、しかしそれはまったく間違っている。
    というのも時代につれて新しい発見があるからだ。それはたとえば考古学的な発見でもあり、また新しい資料が見つかったりということもあるが、なによりもこの本で驚かせてくれるのは分子生物学や言語学といった他の分野の発見などを総合して、日々更新されるものということだ。

    歴史の勉強というとそのときの政権からその時代を説明するという側面があるんだが、この本の特徴としては天皇という存在を背骨として、古代から現代までの通史になっている。いままでとはちょっと違った日本が見えるということにもなる。

    まず、ぼくが習ってきたのはすべては中国大陸から朝鮮半島を経由してきたといった考え方だった。それは日本人の起源もそういった説明をされてきたはずだ。ところがそれはまったく科学的には違うことがこの本では解説されている。
    世界最古の摩耗石器が日本から発見されていることもあり、約六万年前にアフリカを起源としている人間が世界に散らばったわけだが、日本列島に棲みついた人たちが、世界に先駆けて石器を作り、日本人の起源となっている。

    この本では岩宿時代としてこの時代の説明をしているので詳細を知りたければぜひこの本を手に取ってもらいたい。そのまま縄文時代となり、さらに水田稲作がはじまり弥生時代に移行している。この技術も朝鮮半島経由ではない。というのも中国北部から朝鮮半島に伝えられた稲作は畑作だからだ。北朝鮮では水田稲作は天候のせいで、この時代にはできなかった技術で、日本に渡ったのは長江の水田稲作だ。
    まぁ、斯様にいままでぼくが習ってきた歴史はなんだったのか、頭を捻ってしまうことになる。日々、歴史は更新されているというわけだ。

    この通史ではこの石器時代から古代にかけてのボリュームが半分ほどになっている。それは古事記についてもかなりのページを割いているからだ。日本の国の成り立ちについてはかなりていねいに説明されている。
    ヤマト王権が成立して、やがてそれが大和朝廷となり、日本となっている。古墳という存在にはなんとなくロマンを感じてしまうんだが、この本ではじめて知ったが前方後円墳はヤマト王権の象徴だということだ。ヤマト王権の勢力範囲内にしかこの前方後円墳はない。

    じつは逗子にもこの前方後円墳が二基ある。全長 90m という規模でそれなりの大きさなんだが、このあたりもヤマト王権の勢力範囲内だったということだ。なんだかすごい話だよねぇ。
    おもしろいことに朝鮮半島の南部にもこの前方後円墳がある。時代的にはかなりあとに作られたものなんだが、これはなにを意味するのかということだ。簡単にいえばこのあたりもヤマト王権の勢力範囲内だったということだね。

    あとこれはひとつのポイントなんだが、天皇は絶対的な権力を保持した存在ではないということだ。古代の時代から権威の象徴的な存在でしかなかった。たとえば外戚となった蘇我氏が権力を握ったり、平安時代以降は藤原北家が摂関政治をという体勢を作り、五摂家を創設して権勢を独占的に誇っていたわけだ。
    武士の時代になると幕府が政治的な力を持ち、天皇はあくまでもその権力を認める存在となっている。

    なかには政治的に力を誇示しようとした天皇もいたけど、流れとしてはやはりあくまでも政治的な力を認める存在だった。織田信長は意外かもしれないけれど勤王家で、仏教団体は弾圧したが、しかし神社に対してはいっさい敵対的なことをしていないことはおもしろい。
    それに比べて徳川家康は天皇をはじめとする公家に対してはその力をほとんど奪うようにしてきたことははじめた知った。まぁ、その反動だろうねぇ、江戸幕府が倒されたのは。外国との関係が問題になってときに、結局、天皇の権威に縋るしかなくなってしまったところはおもしろい。
    これが日本において、天皇はどういう存在なのかということを如実に教えてくれる。

    これは前にも書いたけど戦後の GHQ でおこなった WGIP のせいで、ずいぶん歪んだ日本の歴史を教えられてきたんだなということが、これを読んで改めて感じることができた。
    この前は上念司氏の経済という視点から日本の歴史を眺めてきたんだが、こうやっていろいろな視点から歴史を眺めると、いろいろな角度から日本を見つめることができて、歴史っておもしろいよなぁと改めて感じいった次第だ。

    かなり分厚い本だったけど、集中すればそれなりにすんなりと読めるので、もし日本という国の成り立ちを改めて知りたいという人にはまことに素晴らしい一冊だといえるだろう。


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