母さん、ぼくのあの折りたたみ傘、どうしたんでしょうね ?


母さん、僕のあの折りたたみ傘、どうしたんでせうね ?
ええ、昨日、海へ落としたあの折りたたみ傘ですよ。

母さん、あれは好きな折りたたみ傘でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

    いきなりなんの話かというと、昨日のアクシデントの話だ。
    ぼくがほぼ毎日、写真を撮っているということは昨日 blog に書いた。
    昨日の逗子はめちゃ寒くて、おまけに朝からみぞれ混じりの雨が降っていた。予報では午後には止むはずだったけど、夕方になっても一向にその気配はなく、しとしとと冷たい雨が降り続けていた。
    ぼくは写真を撮るために、ともかく出かけることにした。もちろん傘を差してだ。

    凍えそうな寒さを久しぶりに味わいながら、海までいってみた。あたりは灰色一色。しかもグラデーションにもなっていない。ただの灰色。こういうときって、海にまったく表情がないので、撮りようがないんだよねぇ。
    ときおり寄せる波があったので、その波が崩れるところをアップで撮ることにした。もちろん傘を差したまま、ぼくは iPhone を構えた。
    SUP でサーフィンをやっているので、寄せる波が来るタイミングは海面を見ていると判る。そこだけ海の色が濃くなっているところがうねりのあるところだ。
    そろそろ波がやってくる。ぼくは iPhone のカメラアプリを起動して、波が崩れるあたりを画面で捉えて、波が打ち寄せるのを待った。
    その刹那、風が、しかもいままでになくちょっと強めの風が吹いたのだ。
    その風が、ぼくの折りたたみ傘を吹き飛ばした。それも波打ち際からちょっと奥の方へ。

    それでもぼくは iPhone を構えたまま、波が崩れるタイミングでシャッタボタンを押した。
    波は綺麗に崩れてくれなかった。
    雨が降りしきる中、傘を失ったぼくは、iPhone をとりあえずポケットに突っ込むと、吹き飛んでしまった折りたたみ傘を探した。
    海に浮かぶ傘。打ち寄せられるのかとちょっと期待したけど、案に相違して、波に弄ばれるように傘は半ば沈みながら沖の方へと流されていく。

    まさに「母さん、僕のあの折りたたみ傘、どうしたんでせうね ?」だ。
    マジでその詩が頭に浮かぶ。冷たい雨がそのぼくの頭を濡らしていく。
    いや、まぁ、飛んでいってしまったものはどうしようもない。いまから海の中に入って取りにいくわけにもいかない。だって冬の海だよ。凍えそうなほど冷たい風が吹いているのに、海に入る気になるわけがない。
    ということで、傘を失ったぼくはとぼとぼと家路についたのであった。

母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの海に、静かに雨が降っているでせう、
昔、雨を弾いていた、あのコンパクトな折りたたみ傘と、
そのグリップに僕が書いた
Y.T という頭文字を
沈めるように、静かに、寂しく。

One Reply to “母さん、ぼくのあの折りたたみ傘、どうしたんでしょうね ?”

  1. […] ばされてしまった、たけいよしひこです。やれやれ。     まぁ、そのときの顛末は blog に書いたんだが、なんとなく未練がましく、その翌日の日曜日にも海へいってみた。 […]

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