血圧は低く、そしてラーメン丼は深く 食欲の壁 ぼくも癌でした


 じつは 7/9 に「味気なさとの格闘」という記事をポストした翌日から体調がおかしくなってしまっていた。
 具体的にどうなったのかというと血圧が下がり、食欲がなくなり、ほとんど自由に身動きができなくなってしまったのだ。
 直接的な原因はよく判らない。けれど、もちろん抗癌剤の副作用だ。

 翌日の 7/10。仕事に出かけた。いったことはいったんだが、仕事先のビルの入り口でなんだか気持ち悪くなってきたので、そのまま帰ってしまった。
 文字通り回れ右といった感じで電車に乗ってそのまま帰り、ベッドへと倒れ込むように潜り込んだのだった。やれやれ。

 この日の朝はまだ血圧がやや低めだなといったところだったけど、きっと日中にさらに下がったのだと思う。
 その翌日の朝、血圧を測ったら、ぼくにとってはあり得ないほど低くなっていた。
 もともと血圧が高めで、しかも抗癌剤の影響もあって、降圧剤を服用して、なんとか「140/110」といった数値になっているのが、いまのぼくだ。
 それがこの日から血圧は「110/70」といった数値に落ちてしまっていた。
 この差がどういう影響を与えるのか、きっと説明しないと解らないだろう。世の中には「110/70」が普通だからという人も多くいる。それは知っている。だから感覚的にピンとこないと思う。

 簡単にいえば、頭に血が巡らない状態といえばいいだろうか。
 急に立ち上がったら頭はクラクラしてしまう。貧血状態の立ち眩みと同じだ。
 だからなにか動作を起こそうとするとどうしても時間をかけてということになる。しかもすぐに疲れてしまう。トイレにいって戻ってきただけで椅子に倒れ込んでしばらく休まないとなにもできないのだ。
 いや、マジで参るよね。

 そこへ持ってきて「食欲減退」だ。
 なんとかものを食べようとはするんだが、じつは喉の奥にまるで関所のようなところができてしまったようで。食べ物を口に入れるところまではいいんだが、咀嚼をはじめて飲み込もうとすると、ここでその関所が邪魔をする。
 口に入れたときに感じた味が、ここで奪われてしまう。そう、たとえばカラー写真から色を抜けてしまうように、さっきまで感じていた「味」がここでとても「不味い」ものに換えられてしまうのだ。
 しかも飲み込むことに対する抵抗感。

 これでは美味しいものも美味しくなくなるし、まったく食べようという気力すら奪われてしまう。
 それでも入院だけは避けたかったのでなんとか凌いで、病院に検査にはいってきた。
 すぐに対処する方法はなく、しばらく抗癌剤治療は延期することになり、体調が戻ってから、今後の治療方針を決めることになった。

 その日の帰り、さすがにラーメンなら食べられるだろうと思って、大船の駅ナカの一風堂でラーメンを食べてみた。
 ところがこれがとんでもない思い違いだった。
 例の喉の奥の関所のおかげで、あの美味しいラーメンのその味たるや、想像を絶するほどの「不味さ」に変換されてしまったのであった。
 いつものなら替え玉もしちゃうのに、この日はたった一杯のラーメンを食べきるのに、とてつもない時間とそして労力が必要だった。
 いや〜、ラーメン丼はかくも深いものであったかと、癌サバイバーのぼくは思い知らされたのであった。やれやれ。

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