乱と変の日本史 その戦いで時代が変わる 読書メモ


 今年の 19 冊目。本郷 和人著「乱と変の日本史」読了。

 前回の読書メモに続いてまた本郷和人氏の本だ。これで三冊目になる。彼の日本史の捉え方はまことにプレーンで、そして解りやすい。
 いままでぼんやりとしていた武士の時代の価値観の変遷がこれではっきりと理解できた気になっている。さすが承久の乱から鎌倉幕府滅亡までの歴史資料の編纂をしている歴史の専門家だ。

 この本では「平将門の乱」にはじまり「島原の乱」までの 10 の乱、あるいは変、擾乱や反乱、まぁいってみると戦いということになるんだが、歴史順に解説している。
「平将門の乱」は武士が社会に登場したときということになるんだが、それまで国を司っていた貴族に対して、武士が台頭してきたということになるだろうか。また天皇を頂点とした朝廷が支配できていた時代ということもできるだろう。
「保元の乱、平治の乱」では武家の棟梁、平家と源氏の争いとなり、さらに続く「治承・寿永の乱」では鎌倉幕府が成立、さらに「承久の乱」では鎌倉幕府内から源氏が排除され、「足利尊氏の反乱」では鎌倉幕府が倒され、室町幕府が成立、さらに「観応の擾乱」では足利直義が倒され、「明徳の乱」は続く「応仁の乱」の引き金となり、「応仁の乱」後、それまでの守護大名に替わり戦国大名が誕生、「本能寺の変」では織田信長が倒されたが、それを継いだ豊臣秀吉が日本全土を統一し、「島原の乱」で騒乱に満ちた時代の最後の乱となったと解説されている。

 武士は支配している土地へのこだわりが強く、鎌倉幕府は将軍である源頼朝が御家人の本領安堵をすることによって成り立っていた。
 この時代以降、武士が政治を司るようになるわけだが、やはり土地との関係がどこまでも考え方の中心になっていたようだ。
 鎌倉幕府と室町幕府の違いはひと言でいえば、どこを実効支配するのかということになる。鎌倉幕府は東国を武士が支配して、京は朝廷が支配していたが、室町幕府は京を支配することで、朝廷の支配を退けたことになる。その代わりに東国を手放してしまった。
 その方向性の違いが足利尊氏と足利直義の争いとなったわけだ。

「応仁の乱」後にそれぞれの国を支配する戦国大名もやはり自らが支配する土地に拘っていた。自分が統治する「国」の領土を維持し、可能であれば拡大することを目指していた。
 ところがこの価値観をぶち壊したのが織田信長だ。
 自らの土地には拘らず「天下布武」を唱え、日本全土の統一を目指した。本能寺の変で倒されるけど、それを豊臣秀吉が引き継ぎ、さらに徳川家康が盤石の体勢で日本を支配したということになる。

 本郷氏の著書では、日本の特徴として「科挙」が採用されず、家柄でその地位を受け継いでいくところにあるという説明がされる。
 そのためなのか武官が常に上位にいて、文官は低く見られがちらしい。とくに武士の時代ではそれが顕著で、あくまでも大切なのは家柄だった。
 中国の文化を影響を大きく受けているはずの日本だけど、この「科挙」だけは他の国とは違って採用していないところは、確かに日本だけの特徴なのかもしれない。

 ただ明治時代だけはその考えはまったく排除されて、実力主義の時代だったというのが、本郷氏の説明だ。
 なるほど日本史をそういう見方で考えることもできるわけだ。
 価値観なんてそう簡単には変わらないはずだが、それだけ明治時代がある意味、画期的でそれまでの日本とは違った時代だったのかもしれない。

 ということで、本郷氏の本を読むことでがぜん日本史が面白くなってしまった。
 個人的にそれまでの固定概念を井沢元彦氏が壊してくれたのだが、歴史の専門家がいい意味で、他の専門家とは違う新しい見方をこうして提示してくれるのはとてもありがたい。
 なんだかこのまま彼の著作を続けて読んでしまいそうだな。


One Reply to “乱と変の日本史 その戦いで時代が変わる 読書メモ”

  1. […]  前々回の読書メモに続いてまた本郷和人氏の本だ。これで四冊目になる。承久の乱から鎌倉幕府滅亡までの歴史資料の編纂をしている歴史の専門家なんだが、日本という国がどういう流れで成り立ってきたのかということをきちんと説明してくれる一冊だ。 […]

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